RPAコラム

課題山積みの自治体にとって、RPAはその救世主となりうるのか。

2018.12.07

RPAは自治体を救う

自治体における職員数が減少傾向にある中、新しい制度などへ対応するため業務量は増加。さらには、多様化する住民ニーズへと対応するため、より高度かつ専門的な知識や対応も求められるようになっています。また、自治体には特定の時期に集中する業務も多く、長時間労働の是正や働き方改革の推進など、業務環境の改善も急務となっています。

そのような状況下、住民サービスの品質を低下させることなく(むしろ向上させながら)、職員への業務負荷を軽減するため、RPAやAIなどの活用を模索し始めている自治体の取り組み例も数多く見られるようになってきました。今回のコラムでは、自治体におけるRPAへの取り組みを見ていきたいと思います。

では、なぜRPAは自治体から注目されるのか。自治体には申請受付などの窓口業務や一定の手順やルールが決まっている業務などが多いことから、業務の自動化による作業負荷の軽減効果に注目が集まっているのではないでしょうか。

また、システム化されておらず手作業で行ってきた専門的な業務の技術継承の手段としてもRPAは注目されています。

自治体におけるRPAの実践例・実証実験例

それでは、実際に自治体でどのようにRPAを活用しているのか。実践例や実証実験例を見ていきましょう。なお、あらかじめ断っておきますが、ここで紹介する例は各自治体や各種団体、メディアなどで公表している資料などを参考にまとめたもので、内容などが現状と異なる場合もありますのでご了承ください。

つくば市(茨城県)

http://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/854/rpa_report0510.pdf

「つくば公共サービス共創事業」では、『RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化』と題した共同研究を実施しました。

申請書の内容を庁内システムに手作業で入力したり、提出された電子データを庁内システムに手作業でコピー&ペーストしたり、画像で送られてくるデータについて手作業で入力したりといった煩雑な作業にかかる手間とコスト、さらには入力ミスなどにともなう修正作業などによる職員の長時間勤務環境を是正するためにRPAを適用。作業時間の短縮(効率化)やミスが少ない正確で的確な処理の実現を検証しました。

結果として、事務所の新規登録業務や回送先情報の登録業務、法人市民税の電子申告業務などにおいて、作業時間の大幅な削減効果を見られたと報告されています。

宇部市(熊本県)

http://www.city.ube.yamaguchi.jp/houdou/ict_innovation/h30/rpa.html

宇部市では多様化する市民ニーズに対応していくため、職員の働き方改革と併せ、労働生産性を高めていくことを最重要課題と捉えています。そのため、デジタル市役所の構築に向けた「デジタル市役所推進基本計画(仮称)」(2019年2月下旬公表予定)を策定。その一環として、RPAの効果実証を開始しました。

法人台帳、児童手当、保育園入所、生活保護費支給、就学援助の窓口業務および人事・給与などの内部系業務を対象に、業務の効率化、市民サービスの向上、働き方改革などをめざして効果実証を段階的に進め、2019年度からの本格導入につなげていく予定です。

大津市(滋賀県)

http://www.city.otsu.lg.jp/shisei/mayor/diary/h30/20100.html

大津市では、2018年4月に新組織として「データラボ」を立ち上げ、EBPM(Evidence-Based Policy Making)とともに、AIなどの積極的活用に取り組んでいます。その一環としてRPAの積極的な導入を進めており、市の業務をより効率化することによって、市民への迅速で正確なサービスの提供を目指しています。

また、職員の働き方改革の観点からも業務が削減され、人件費の削減にもつながると期待しており、10年後の仕事のあり方も見据えた恒久的な取り組みとしてRPAの活用を推進しています。

奈良市(奈良県)

http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1516067390763/simple/30042601.pdf

奈良市では、時間外勤務縮減などの働き方改革や、「よりコンパクトな市役所」実現のための職員数の適正化などに向け、RPAを活用した市役所業務の展開や効果を検証する実験を実施しました。

市役所内には人的作業や紙ベースでの業務が数多く残っており、公共サービスをデータによる運用に移行し、業務の迅速化と職員数のさらなる適正化など、生産性の向上につなげることを目的としています。

今回の実証実験においては、データ入力やチェック、定期的な報告資料の作成など、RPA が対応可能な庁内業務において作業の効率性や正確性等の効果を検証し、そこで得た結果やノウハウを基に本格的な導入に向けた検討を進めるとしています。

加賀市(石川県)

https://japan.zdnet.com/article/35118375/

加賀市では限られた財源や人員による安定した行政サービスの提供をめざし、品質向上および業務効率化をめざした取り組みの1つとしてRPAの導入を検討。総務課および財政課の業務の中から、「時間外勤務集計業務」、「契約管理システムと電子入札システムの相互連絡事務」、「財産貸付・使用許可事務」の3つの業務に対するRPAのパイロット導入を行いました。効果検証を行った結果、使用される書類フォーマットの統一や紙情報の電子化などの業務改善を含め、最大約7割の工数削減効果が見込めることを確認しています。

茨城県

https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/ict/20180806.html

ICTを活用した「いつでもどこでも」効率的に仕事ができる環境づくり、そして仕事の生産性の向上など働き方改革の推進に取り組んでいる茨城県では,今後の本格的なRPA導入に向けて、庁内業務におけるRPAツール導入の適合性の検証や作業効率性向上などの効果の評価を行うと発表しました。

対象業務は、「予算令達にかかる財務会計システムへの入力業務」や「教職員の出張旅費の入力業務」、「国民健康保険事業にかかる資料確認業務」など、県庁内の定型的な業務を選定するとしています。

東京都

http://www.nttdata.com/jp/ja/news/services_info/2018/2018120301.html

東京都では、2018年3月に発表した都庁全体の働き方改革などの方針を盛り込んだ「2020改革プラン」に基づき、BPRの推進に向けて『RPAによる作業自動化の共同実証実験』を開始。窓口・事業系業務、内部事務系業務など、RPAによる自動化が期待できる業務を選定し、「職員の稼働時間の削減効果」、「ミスの軽減による業務品質の改善効果等の測定」、「RPAの適合可能性の高い業務や処理」の分析などを実施するとしています。

大阪府、和歌山県

http://www.pref.osaka.lg.jp/it-suishin/rpa/rpa010_zissyou.html

大阪府庁版「働き方改革」の取り組みの一環として、ICTを活用した業務プロセスの改革や職員の仕事の負担軽減を図ることを検討しています。その一環として、府庁内の事務作業にRPAを適用。業務効率化を図ることを目的とした実証実験を実施しました。なお、同実証実験は和歌山県と情報を共有し、連携しながら進められているといいます。

主な対象業務としては、所属ごとの時間外実績データを表計算ソフトで集計し、手作業で報告資料へ貼り付ける作業を繰り返す「時間外集計報告業務」や、通知書の金額などの自動入力およびメール発送作業を自動化する「支援学校通知業務」、報告書様式の作成を自動化する「予防接種実施状況照会業務」などを挙げており、業務にかかる作業時間を削減、作業品質の向上や人為的ミスの防止、業務引き継ぎの円滑化、非システム化による業務の効率化といった効果を期待しているといいます。

RPAの導入をスムーズに導くためには

取り上げた実証実験の中には最終結果の報告がこれからのものもありますが、さまざまな自治体がRPAの有用性に期待しており、一定の成果も上がっていることは間違いありません。

一方、RPAに限ったことではありませんが、活用や導入に失敗するケースがないわけではないでしょう(その情報はあまり公表されませんが)。RPAの導入をスムーズに導くためには、適用する業務の見極めが初期段階では重要となります。最初は成果が確実で、わかりやすい業務を選ぶことがポイントです。すなわち、成功体験を役所内で共有し、適用する業務や部署を段階的に広げていくことが導入成功の近道となります。

また、適用する業務に関しては、業務デザインの見直しを行ってから、自動化したほうが良いでしょう。ムダやモレ、属人化している部分などを洗い出してから自動化しなければ、非効率な作業手順もそのまま自動化されてしまい、効果は限定的となってしまいます。

弊社がお客様へ利用を推奨している「WinActor」は、今回紹介したつくば市や東京都における実証実験においても採用されています。純国産RPAならではの特徴として、「WinActor」はきめの細やかな業務フローに合わせたシナリオの設定がしやすく、Windowsパソコンで操作できるあらゆる操作を再現することができるため、一般企業のみならず、自治体における各種業務のる自動化・効率化にも有用です。

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