RPAコラム

診療現場と医療事務現場を救うRPA導入のススメ。

2019.05.09

診療現場と医療事務現場を救うRPA導入のススメ。

システム化が進んでいない医療現場

今回は医療機関におけるRPAの活用について考えてみたいと思います。

一般的には医療機関におけるシステムといえば電子カルテシステムを思い浮かべる方も多いと思いますが、その導入率は意外と低く、たとえば一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の調査データ(※1)によれば34.4%にとどまっています。検査内容や処方箋などを電子化したオーダーエントリーシステムとなるともう少し導入率は高くなるのですが、いずれにせよ治療や診断の品質、安全性など、人の命へと直結する分野でもあるため、慎重な対応にならざるを得ないのかもしれません。

加えて、中小規模の医療機関にとっては電子カルテやオーダーエントリーシステムを導入するためのコスト負担は大きく、医療機関の経営者によるITへの関心度が低かったり、院内にITの専門家がいない場合、システム化が進まないケースも多いといいます。

診療現場におけるRPAの活用

一方、電子カルテシステムやオーダーエントリーシステムが導入されている場合でも、各システムを導入するタイミングやサポート先が異なることなどから、手作業を介してシステム間のデータを連携しているケースも多いと聞きます。このような状況は、非効率的であり、ミスやトラブルが発生するリスクが内在し、業務が属人化して管理・運用コストの負担増やブラックボックス化にもつながりかねません。

これまでこのような状況を解消するためには、システム全体を刷新するか、追加でデータ連携の仕組みを構築するなど選択肢は限られましたが、より手軽に低コストにデータ連携の定型業務を自動化する手段として、RPAの活用が期待されています。もちろん、急性期病院(発症後おおよそ14日間以内の急性疾患や急性増悪の慢性疾患に医療を提供する病院)とリハビリ病院など異なる施設間の連携にも有用です。

一方、医師個人の業務についても、厚生労働省 医政局が実施した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(※3)によると、「医療記録(電子カルテの記載)」、「患者への説明・合意形成」、「医療事務(診断書などの文書作成、予約業務)」、「血圧などの基本的なバイタル測定・データ取得」、「院内の物品の運搬・補充・患者の検査室などへの移送」といった業務のうち、20%弱、1日当たり約47分が、看護師や事務職員などに分担可能だとされています。

このような話を目にすると、高度なシステムや仕組みを導入しなくてもRPAでカバーできる部分があるのではないかと考えてしまいます。

医療事務の現場におけるRPAの活用

RPAの活用は、このような診療行為の現場だけでなく医療事務の分野においても期待されています。一般企業と同様に業務の効率化や迅速化、信頼性の向上を図るため、医事会計システムや院内物流管理(在庫管理、安全管理など)システムなどの活用が進んでいますが、特にレセプト(診療報酬明細書)を作成するレセコン(レセプトコンピュータ)システムに関しては、2010年に電子化による請求が原則義務化となったため、医療機関数・薬局数ベースの請求状況(※3)を見ると93.5%が電子化されているといった状況が見られます。

ただし、レセプトが電子化されていても、請求がオンライン化されているのは約6割にとどまります。3割以上が電子媒体(CD-Rなど)を介してやり取りされています(※3)。要するに、データは電子化されていても何らかの形で手作業を介して処理されていることは間違いなく、RPAの活用によって定型業務の自動化がなされれば、事務業務のさらなる効率化や迅速化につながるでしょう。

RPAを医療機関へとスムーズに導入するためのポイント

このように医療機関におけるさまざまな課題を解消できる可能性を持っているRPAですが、その特性を理解した上で導入・活用をしていかなければなりません。特に、医療機関の場合は本番環境でのトラブルは病院運営に直接影響をおよぼす可能性があります。外部のベンダーに任せっきりにしてしまうと、いざというときの対応が後手後手に回ってしまいますし、システムや業務手順の変化へと柔軟に対応しながら活用の幅を広げていくためにも、内部に管理体制を設けて検証やテストを繰り返し行うだけでなく、ロボットを作成・修正できる体制を整備していく必要があるでしょう。

もちろん、最初からそのような体制を設けるのは難しいので、経験豊富な導入ベンダーと協力しながら、段階的に内部で運用できる体制を実現していくのが、RPAを使いこなすポイントになります。

また、各システムのサポートをしているベンダーは、外部システムであるRPAに対して柔軟な対応ができなかったり、RPA利用時の要求事項に関して、互いに上手く理解できない場合もありますので、システムも理解でき、貴社の要望も理解できる客観的な立場のRPAベンダーが入ることで、導入プロジェクトがスムーズに進む可能性も高まります。

日本ワムネットでは、豊富な経験とノウハウをベースに、RPAの導入を支援するだけでなく、導入後の内部運営体制の確立をサポートし、貴院の環境や体制に最適な活用提案と管理体制の構築を支援します。RPAの導入に際しては、お気軽にご相談いただければと存じます。


参考文献

※1
『オーダーエントリー・電子カルテシステム導入調査報告 -2017年調査(平成29年)-』( 一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会)
https://www.jahis.jp/action/id=57?contents_type=23

※2
他職種(看護師や事務職員等のコメディカル職種)との分担
『医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(21ページ)』(厚生労働科学特別研究、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」研究班、厚生労働省医政局、2017年4月6日)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000163154.pdf

※3
請求状況(医療機関数・薬局数ベース) 【平成31年1月診療分】
『レセプト請求形態別の請求状況(平成30年度);平成31年1月診療分(1ページ)』(社会保険診療報酬支払基金、2019年4月10日)
https://www.ssk.or.jp/tokeijoho/tokeijoho_rezept/tokeijoho_rezept_h30.files/seikyu_3101.pdf


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