RPA不毛地帯の建設業界における活用動向を探る。

市場規模も大きく労働者人口も多い建設業界。復興関連事業や大規模なスポーツイベントなどの開催にともない、需要は順調に増加してきました。その一方、慢性的な人手不足に加えて、材料費や人件費などのコスト高騰により、利益率は低下傾向にあると言われています。

また、2020年以降は国内における需要が落ち着くことが予想されており、すでに都心部のマンション建設などは供給過剰の状態になっているとの声も聞かれます。

その様な状況を背景に、RPAの活用による業務の効率化を打ち出す大手建設企業なども見られるようになってきました。

そこで今回のコラムでは、建設業界におけるRPAの利用状況について紹介します。なお、事例の選定にあたってはいわゆる建設会社（ゼネコン）だけでなく、設計事務所などの建設関連事業を営む企業の事例も取り上げています。あらかじめご了承ください。

大手住宅総合メーカーでは、ホワイトカラーの生産性向上を目指し、RPAを活用してさまざまな業務を自動化。業務の確実な執行と効率化、その両立を図っています。

具体的には、「働き方改革推進」「内部統制業務効率化」「法令順守、コンプライアンス強化」「連結決算の生産性向上」「日常会計の生産性向上」「経営管理の高度化」「情報収集のコスト削減とスピード向上」といった業務領域にRPAを適用して、成果を上げているといいます。

住宅の補修や商業施設の内装工事などを手がける建物メンテナンス会社では、受注した案件ファイルをサーバへと登録する業務や作業報告書（PDF）を転送する業務など約90種類のバックオフィス業務をRPAで自動化。

問い合わせ対応や技術者の手配、施工関連の報告業務の効率化を図り、年間約3万時間に相当する生産性向上を実現すると同時に、RPA導入部署では売上の伸びが総労働時間の伸びを上回るといった成果も上げています。

年間約1,000件におよぶ図面データをデータベースへ登録している建築設計事務所では、受付処理やファイルのコピー、作業記録といったデータベース化関連業務にRPAを適用。年間約60人日分に相当する作業時間の削減を実現しました。

データベース化業務は、同社の取扱件数が増えるのに比例して担当者への負担が増し、繁忙期には登録に大幅な遅れが発生することもあったといいます。人材派遣などの利用も検討しましたが、人員が入れ替わるたびに作業手順を教育し直す手間が発生することなどから、人員を増やすことなく、業務自動化・効率化が可能なRPAの導入を決断しました。

建設コンサルタント会社では、公募情報を収集して専門部門が検討を行うためのリストを作成しています。

従来は、決められた時間に全国の本支社で公募情報サイトから必要な情報をダウンロードして、社内システムに登録して一覧表を作成していました。しかし、正確かつスピーディな情報の収集が求められる中、取扱件数は年間数万件におよび、公募案件数が増える年度末などには多くの作業時間が膨れ上がることから、手作業による処理に限界を感じ、RPAによる作業の自動化を進めました。

さまざまな業界や業務でその導入が広がっているRPAですが、調べてみると建設業界における利用はまだ広がっていないという印象です。特にコア業務である建設現場における実践例は見られませんでした。

一方、生産管理システムなどへの情報登録といった付帯業務（間接業務）にRPAを適用することで、設計業務の効率化を図る取り組みや、業界は異なりますが、設計図をデジタル化して管理する一連のプロセスをRPAで半自動化する機械メーカーの取り組みなど、設計部門におけるRPAの利用が広がりつつある様子も見られます。さらに、CADによる設計業務にRPAを適用する取り組みもはじまっているようです。

建設業界のみならず、今さまざまな場面で課題となっている熟練者の技術継承の問題を解消するための手段として、RPAは有効だと感じており、これからも建設関連業界におけるRPAの活用動向については調査を続けていきたいと考えています。

日本ワムネットでは業界や業種を問わず、RPA国内シェアNo.1の「WinActor」を活用したRPAの導入・運用を支援しています。ご興味をお持ちの方は弊社までお気軽にお問い合わせください。